ボツにされた記事の方が面白い

ボツになった記事などを掲載してゐます。よその媒体の取材中に、ゆくりなく逢着する情報は、媒体にとっては無価値だからこそ、この紙幅で至福の記事になる…かもです。

勤皇派が概観する対イラン開戦

 ログインせずにYouTubeを開くと、今どの方向に世論が誘導されむとしてゐるのか、それがよく分かります。

 対イラン開戦を控へた先月は、以前シリアの内戦の取材をしてゐた山本美香さんが政府軍に殺害された事件の、その真相を取材した日テレNEWSの番組を、YouTubeは視聴者にブラウジングさせてゐました。同胞が殺害されたのだから、日本の視聴者はこの番組に関心を示すだらう。たゞし──それは飽くまでキャッチであって──その番組の意図は曰く「中東では多くの国民が独裁政権に苦しめられてゐる」その「実態」を私たち大衆に周知せむとするものでした。また開戦後には、この文脈で「多くのイラン人がトランプ大統領に感謝してゐる」ことを、大手メディアがアンカーの枠で報道してゐます。*1

 先年の「アラブの春」や「オレンジ革命」及びこれに続くウクライナ戦争なども、同じ戯曲に仕上がってゐた。

 この工作に、かつてフランスの政治家のアレクシ・ド・トクヴィルといふひとが応へて曰く、

実際にツァーリの広大な権力が、力を支えにしてのみ成り立っていると考えるならば、それは大きな間違いである。それはとくにロシア人の意志と熱烈な共感のうえに成り立っている。人民主権の原理は、その政府がどのように名づけられていようと、すべての政府の基底に存在しているものであり、より自由でない諸制度の下に、ひそやかに息づいているものなのだ。

トクヴィル著『フランス二月革命の日々』喜安 朗 訳|岩波文庫

 

 ルイ・ナポレオンの内閣で外相だった折しも、さやうに彼はロシアのことを理解してゐた。それたけこの「反体制」劇は永年に亘って演じられてゐるのでした。*2

 異端は異教よりも憎しなどと申しまして、どこの国にも内情に相剋がある。わが国のやうな、その例外があれば、民間人の居住区を空襲して降伏させる。そして誰かがそこに相剋の種を植ゑてゆく。さだめし、そこに親米政権ができあがる*3 。その親米政権とは何か。

 トランプ大統領は「私は "the deep state" に従はない。すなはち戦争をしない大統領になる」などと有権者に約束して大統領に選出されたのでした。するとエプスタイン文書なるものが公開されて、ビル・クリントン元大統領が買春してゐたことが画像付で公表されるに至った。本人は公聴会で本件は事実にあらずと申してゐますので、捏造かもしれませんが、その画像に彼と一緒に写ってゐたのは少女だった。トランプ大統領もまたエプスタイン氏と交際してゐた。体制に反抗すれば大統領といへども、現在の地位ばかりか、かうして社会的生命をも失ふ。でもクリントン氏は体制に従順だった。あるいは彼はトランプ大統領を脅迫するための道具にされたのか。

 かうしてトランプ大統領は支持者を裏切って、体制の傀儡になった。彼が "the deep state" と指呼した体制は、シオニズムの理想を阻む者を許さない。それが今般のイランでした。

 昨日3月2日の衆議院予算委員会で、伝統的に日米離反を図る日本共産党の代議士が、去る28日に開戦した米・イスラエルによる対イラン戦争について政府にかう質問しました、

「このイランへの攻撃は、明白な国連憲章、国際法違反ではありませんか。アメリカとイスラエルに直ちに、無効な先制攻撃をやめるよう求めるべきではありませんか」

 これに対して茂木外務大臣は、

「イランによる核兵器開発、これは許されないというのが、わが国の一貫した立場であります」

 等と、さだめし不本意ながら、米・イスラエルの軍事行動を擁護することしかできない。*4

 わが国は例によって中国共産党政府との相剋で、きはめて劣勢な立場であるから、曰く「同盟国」の対外戦争に文句を言へる場合では全然ないのでした。現に北京とワシントンDCの政府の関係は目下なかなか良好ではないか。世界はさやうにできてゐる。この挟撃の絵図を破らむとして、安倍さんのやうにプーチン大統領と交際すれば、きっと暗殺される。あれが犯人を指嗾した暗殺でなかったとしても、死んでもらはなければ、世界は多極化し、米国一強の時代は終はってしまふ。

 待望の大統領に失望した米国のトランプ支持者らは、どうするだらうか。いつも米国で銃規制が頓挫するのは「いづれワシントンDCの傀儡政府を打倒せむ」とする南部の国民が、決して銃を手放さないからでした。今その銃を手に取らねばならない程、米国民は生活苦に追ひ詰められてゐます。

R8.3.3  ミソラ通信

*1
開戦前の報道=https://www.youtube.com/watch?v=jAGhwkh40rw
開戦後の報道(time code 10:10)=https://www.youtube.com/watch?v=DssPx1LeWq0

*2 初めはソ連邦政府もまたユダヤ系の新米政権として立国したのでした。

*3 小欄がポスト致しましたこの動画に、その仔細がございます。

*4 これには後日談がございます。米国時間3月19日(日本時間20日未明)にホワイトハウスで開催された日米首脳会談の後日、同25日に、参議院予算委員会で「総理訪米に関する集中審議」がありました。この際にも山添拓(日本共産党)委員が政府に「総理はトランプ大統領に、米国とイスラエルによるイランへの攻撃は一言も批判なさってゐません。フランスのルモンド紙に胡麻刷りと報じられたのも仕方ない」「私はあまりに卑屈な従属ぶりだと思ひます」等と質問した。
山添委員「アメリカとイスラエルの両国に対して、攻撃をやめ、戦争を止めるやうに求めるべきではありませんか。」
高市総理「私は会談の冒頭で、平和と繁栄をもたらすのはドナルドだけだと申し上げました。それは平和を構築できるのもトランプ大統領の考へ方でもあるし、そしてまた今、非常にホルムズ海峡を含めてですね、困難な状況にあるなかで、世界経済は厳しい状況にある。またこれを改善していけるのもトランプ大統領だといふことを申し上げました。そこに含み置いた意味をよくお考へ頂けたらと思ひます。」
山添委員「含みではなく、はっきり物を言ふべきだと思ひますよ。攻撃をやめよと、アメリカに対してもイスラエルに対しても総理、あらためて求めるべきではありませんか。」
茂木外務大臣「外交交渉に於きましては、相手が納得する言ひ方、これはあるんだと思ひます。たゞ言へばいゝといふことではなくて、どういった形で相手を能動的に動かしてゆくか、かういった形での交渉、これは極めて重要だと思ってをります。」

これは茂木さんが不世出の外務大臣であることを示す答弁でした。

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