きのふ「兄弟で天下取った秀吉 無謀な朝鮮出兵のなぜ *1 」といふ、NHKの大河ドラマを褒める新聞記事を読みました。
この産経新聞の記事は「なぜ」と追求しておきながら──労を惜しんでか何か知らむ──結局わからず仕舞ひであり、要するに「太閤は老いて呆けたのだ」と結んでゐます。新聞記者たるもの、全然それでは仕事になってゐない。といっても頃日は、さやうな「作文」が新聞に載ることは今や珍しくもないやうでございます。
かくも執拗に有耶無耶にするのは、けだし体制への諂ひか。
現にその真の経緯を、かつてNHKもまた説いたことはなかった。これまで「それは無謀な侵略戦争だった」といふ、外国にとって好都合なステレオタイプを説くばかりであった。己の情報統制に自信があるから、さやうに平然と、NHKは国民を騙す。
では、なぜ太閤殿下は、いはゆる朝鮮出兵をしたまうたか。
小欄ミソラ通信は絶版になってゐる国学の名著を復刊してゐます。一言で「絶版になってゐる」と申しましても、これには様々な思惑や背景があった。たとへば本件についても、その絶版書が記すところとNHK説とでは、それこそ対蹠でございます。換言すれば戦後体制にとって、これは都合が悪いことしか書いてゐない。この朝鮮出兵の仔細はこゝにリンクいたしました、本居宣長が著した『馭戎慨言』に書いてあります。

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豊臣秀吉は、その純粋な勤皇精神が長じて関白になりました。まづ戦後の言語空間ではこの事実が秘匿され、今日に至ってゐます *2 。すなはち関白は御稜威を諸越(対岸の諸国)にも及ばさむとして、朝鮮の使節に曰く、
「大明國ニ入リ、吾朝ノ風俗ヲ四百餘州ニ易ヘ、帝都ノ政化ヲ億萬斯年ニ施サンコト者、方寸ノ中ニ在リ」
「今ヤ大明國ヲ征セント欲ス。蓋非吾所為、天ノ授クル所也」
すなはち、これは一通りの大志を抱いてのことではなかった。
これまで明国は足利将軍へ「義持ヲ封シテ日本國王ト為」などと、生意気なことを書いてよこしてゐた。その上で将軍家は明国から貢物をもらってゐた。
北条時宗公が元寇を皇軍で跳ね返すと、諸越の人心は日本軍を脅威と感じて、自国が侵略されることを警戒した。このころ現に倭寇と指呼された海賊が、商船を襲ふのみならず、しばしば大陸の沿岸に攻め入って土地を占拠することがあった。それゆゑ日本を宥めてその脅威を抑へむとして、明国は足利将軍に頻々と貢物を贈ってゐたのでした。その供物が相当の金品なので、足利将軍は彼の無礼には気を注がずに貢物を喜んで受け取ってゐた。さういへば義満公などは金閣寺を普請するなど、ずいぶん繁盛してゐた。だから実際は明国が日本に朝貢してゐたのでしたが、今あべこべに「足利将軍は明国から冊封を受けてゐた」と吹聴されてゐます。
これが秀吉の時代になりますと、こんどは秀吉に対して明国は貢物を献上する。そして彼はまたもや「爾ヲ封シテ日本國王ト為」などと、朝鮮使節を通じて太閤に書いてよこした。さすれば明国は折助にしてゐる朝鮮に対して体裁が好い。彼は日本に貢ぎながらも「周辺国を従へた大国である」といふ示威ができる。しかし秀吉は足利将軍とは違った。太閤は朝鮮使節に対して、かゝる筆致を咎めた。足利将軍も太閤も、明国に命じられて日本国を封すものではありません。畏くも天皇にご親任されてゐたのでございます。太閤は天皇とわが国に対するその無礼に怒り、その明王の装束などの貢物を庭に放り投げた。すなはち太閤の朝鮮出兵は多分に彼に対する膺懲でもあったのです。
もし膺懲しなかったら、くだんの「冊封を受けてゐた」といふ明史の嘘が永久に真実になったでせう。往時は川崎C-2があったわけでなし、軍隊が海を渡って、徒歩で朝鮮半島を、干戈を交へながら北上して明との国境ひまで達することが、どれほど大変か。糧は不自由だし、おまけに寒い。さやうな難儀は誰もしたうない。それでも祖たちは私たちの国体と尊厳のために戦ってくれたのでした。
だからこそNHKは、わが国体を内部から壊し、中国共産党に有利な歴史に史実を書き換へるために、衆口金を鑠かすを期して本件を躍起になって扱ふのでした。産経新聞もまた、結局はその主人が北京でなくワシントンDCだといふだけであった。すなはち旧戦勝国が壟断する戦後体制を、今後も維持せむとする、その思念はNHKと同様であった。くだんの記事などはその本質が分かる好例ではないでせうか。
本書を読みますと、以上のことなどが詳しく判ります。
R8.3.20 ミソラ通信
*1 https://www.sankei.com/article/20260318-IMV4TX77BBKFXC73HJ64WMGTN4/
*2 たとへば占領中にこの図書が発禁にされてゐます。戦前は「児童向けの豊臣秀吉の伝記」といへば、この本でしたが、さやうにGHQは大東亜戦争とは無関係の書籍も焚書にしました。
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